【5分で分かる】産業廃棄物の汚泥とは?処理方法も詳しく解説
- 雪乃 石原
- 2024年5月10日
- 読了時間: 12分
更新日:2024年5月17日
「これは産業廃棄物の汚泥に該当するのだろうか?」
「汚泥はどうやって処理すれば良いのだろう?」
上記のような疑問をお持ちの方のために、汚泥の基本的な知識を分かりやすく・詳しく解説します。
産業廃棄物の1つである汚泥は、処理方法が法律によって定められています。
正しく処理をするためにも、以下のような知識はきちんと知っておきたいものです。
汚泥の種類と具体例
汚泥の処理方法
なるべく専門用語を使わずに解説しますので、安心して読み進めて下さい。
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汚泥とは

汚泥とは、その名の通り「汚い泥」のことです。土木工事や建設工事などの事業活動を行う中で発生した泥状物質を総称して汚泥と呼びます。
汚泥が発生するのは下水・排水処理など水を使う際。水の中に含まれた物質が浮いたり沈んだりして泥状となり、汚泥となるのです。
基本的には、事業活動を通して発生した汚泥は業種を問わず産業廃棄物となります。よって、産業廃棄物処理業者に依頼するなどして適切に処理する必要があります。
ただし、し尿が含まれる汚泥は、含まれる量に関わらず一般廃棄物に該当しますので注意が必要です。し尿が含まれる汚泥は原則として市区町村で処理されます。
水の中の物質が重金属や有毒性をもつ場合は、特別管理産業廃棄物として取り扱われることもあります。
特別管理産業廃棄物とは、廃棄物処理法で「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」と定義されている廃棄物のことです。
汚泥の場合、重金属や農薬、ダイオキシン等を一定濃度以上含む場合は特別管理産業廃棄物として扱われ、より厳密な管理・処理が求められます。
特別管理産業廃棄物の判定基準に関しては、環境省のホームページをご確認ください。
令和2年度の調査では産業廃棄物全体の排出量の約4割が汚泥で、毎年大量に排出されている現状があります。
また、産業廃棄物でありながら下水道に流す、山に投棄するなど不法投棄も問題になっています。
汚泥の種類と具体例

汚泥は、大きく分けて有機汚泥と無機汚泥の2つに分類されます。
有機と無機の違いは、炭素を含むかどうか。炭素を含めば有機、含まなければ無機です。
それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。
有機汚泥
有機汚泥は、下水処理場・食品工場・動物の飼育場などで発生します。
水の中に含まれる有機物が少なければ水中の微生物によって分解されますが、流れ込む有機物の量が分解量より多くなると水は汚くなり、汚泥となるのです。
有機汚泥の代表的なものとして挙げられるのは、以下の4つです。
活性汚泥法による処理後の汚泥
パルプ廃液から生ずる汚泥
その他動植物性原料を使用する各種製造業の廃水処理後に生ずる汚泥
し尿を含まないビルピット汚泥
処理方法によってはリサイクルして再資源化できるものもあります。
含まれる成分によって処理方法が異なるため、注意が必要です。
【有機汚泥の具体例】
製紙スラッジ下水汚泥
ビルピット汚泥(し尿の混入している物を除く)
洗毛汚泥
消化汚泥(余剰汚泥)
糊かす
うるしかす
無機汚泥
無機汚泥は、土木工事現場や金属工場、砂や金属成分などを多く含む排水を処理する施設で発生します。
代表的な無機汚泥としては、以下の5つが挙げられます。
赤泥
けい藻土かす
炭酸カルシウムかす
廃白土
浄水場の沈でん池より生ずる汚泥
無機汚泥は脱水・乾燥させてそのまま埋め立て処分されることが多いのが現状ですが、セメント原料や土木資材としてリサイクルできる可能性があります。
【無機汚泥の具体例】
浄水場沈でん汚泥
中和沈でん汚泥
凝集沈でん汚泥
めっき汚泥
砕石スラッジ
ベントナイト泥
キラ
カーバイトかす
石炭かす
ソーダ灰かす
ボンデかす
塩水マッド
廃ソルト
活性炭かす
各種スカム(油性スカムを除く)
廃脱硫剤
ニカワかす
脱硫いおう
ガラス・タイル研磨かす
バフくず
廃サンドブラスト(塗料かすを含む物に限る)
スケール
スライム残さ
排煙脱硫石こう
赤泥
転写紙かす
建設汚泥
有機汚泥と無機汚泥の区別
有機汚泥と無機汚泥は、法律上、明確に区別する基準がありません。汚泥としてひとまとめに扱われています。
ですが、汚泥処理の業者によっては無機汚泥しか処理が認められていないケースもあります。
産業廃棄物の処分許可証を有していたとしても、「汚泥(無機性の無害なものに限る)」と記載されていたら、有機汚泥の処理は依頼できないのです。
有機汚泥と無機汚泥の区別に悩んだら、自治体や廃棄物処理業者に問い合わせましょう。
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汚泥の比重

汚泥の比重とは、産業廃棄物の体積を重量に換算するときの考え方です。
産業廃棄物の重量の計測が困難な場合は、その産業廃棄物の体積に産業廃棄物の種類に応じた換算係数を乗じて得たものを重量とみなします。
産業廃棄物の比重は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)で定められています。
汚泥の換算係数は、1.1です。
汚泥が2.7㎥(立法メートル)ある場合は、
2.7×1.1=2.97
2.97トンの重量があると換算できます。
なお、種類ごとの体積の計測が困難な産業廃棄物については、その主たる産業廃棄物の種類の換算係数を採用して計算し、重量換算します。
汚泥処理の現状

環境省の調査によると、令和2年度の汚泥の排出量は約163,648 千トンでした。産業廃棄物の中で最も排出量が多く、全体の約43%を占めています。
前年度は170,841千トンでしたので、若干減少しています。
平成18年度の排出量は約185,327千トンで全体の44%と、約20年前と比べて若干の減少傾向にはありますが、排出量が大きくは変わらない状況です。
汚泥の排出量が多い理由の1つとしては、何を汚泥とするかの判断基準が明確に定められていない点が考えられます。
汚泥かどうか判断する上で、成分や性状の条件は特にありません。泥状の物質であれば汚泥に分類できるため、結果として汚泥として処理される廃棄物が多くなるのです。
また、水分を多く含んでいることも汚泥の排出量が多くなる理由として挙げられます。
排出された汚泥の処理状況は、約7%が再生利用、92%が減量化、1%が最終処分という内訳です。
再生利用が7%というのは、他の産業廃棄物と比べて最も低い割合です。
高いものだと、がれきや金属くずは96%が再生利用されており、産業廃棄物全体の合計を見ても再生利用の割合は53%。汚泥の再生利用率がかなり低いことがおわかりいただけると思います。
減量化ののちリサイクルされている場合もありますが、埋め立てされる割合が多いのが現状です。
最終処分場に埋め立てられる量には限りがあるため、汚泥の再生利用率向上は今後求めらていくでしょう。各企業の取り組みが非常に重要になってきます。
参考:環境省資料「産業廃棄物の排出・処理状況等(令和2年度実績) 」「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 平成18年度実績 」
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汚泥の処理方法8パターン

汚泥の処理方法は、無機・有機や成分によって様々なものがあります。
状態によっても異なりますが、「焼却」「脱水」「乾燥」といった方法で減量化されたあと、最終処分もしくはリサイクルされるのが主です。
代表的な処理方法を8つ紹介します。
焼却
焼却は、汚泥の減量化には有効な処理方法です。有機・無機どちらの汚泥も焼却処理が可能です。
水分を多く含んでいるので、焼却前に前処理が必要になります。
焼却処理の過程は以下の通りです。
汚泥を濃縮する
薬品を混合して脱水する(脱水してできた固形物を「脱水ケーキ」と言います)
焼却炉で灰にする
最終処分またはリサイクルされる
焼却によって、脱水ケーキの中の有機物はすべて無機物になります。
100トンの脱水ケーキを焼却した場合、灰は約2トン。大幅に減量化できるのです。
ただし、焼却の過程で、ばいじんや燃え殻などの新たな産業廃棄物が発生することがあります。
ばいじんに関しては「」
燃え殻に関しては「」
の記事で解説しています。
焼却処理で発生した灰は、主に以下の3つの方法で最終処理されます。
埋め立て
溶融
セメント原料
埋め立て
再利用ができなかったり、限界まで減量化したりしたあとは埋め立て処理が行われます。
埋め立て処理は最終処分の一種で、最終処分場で土の中に埋めたり、重ねたりして廃棄物を保管し続ける方法です。
フレキシブルコンテナ(※)などの容器へ収めた状態で、管理型最終処分場で埋め立て処理されるのが一般的です。
※フレキシブルコンテナ:ポリプロピレンやポリエチレンなどの柔らかい素材でできた折りたためる袋。フレコンバッグ、トンバッグなどとも呼ばれる。
ですが、汚泥の中に重金属が含まれる場合は、管理型最終処分場には埋め立てられません。
有害物質が出てこないよう、コンクリートの囲いと屋根で周囲から遮断されている、遮断型処分場で処分されることになります。
溶融
溶融とは、個体を1300~1700度くらいの高温で加熱して液体状に溶かし、減量化・無害化する処理です。
廃棄物の容量を大幅に減らせるのが大きなメリットになります。
溶融後に冷却すると、「溶融後スラグ」という黒いガラス状の物質が残りますが、この溶融後スラグは土木資材や建設資材などへリサイクルできます。
埋め立て処分になる廃棄物の量が減らせて、リサイクルもできるということで利点が多く、各地で導入が進んでいる安定化方法です。
セメント原料化
セメントの原料は石灰石や鉄、ケイ石、粘土類、石こうなどです。
汚泥の焼却で発生した灰は粘土とほぼ同じ成分であるため、そのまま粘土の代わりとして利用できます。
処理方法によっては、焼却をしないで汚泥をそのまま使用する場合もあります。
埋め立て
無機汚泥の場合、含水率85%以下であれば焼却処分をせず直接埋め立て処理をすることも可能です。
ただし容量がかさむため処分費がかかる可能性があること、最終処分場の受け入れ容量が逼迫する可能性があることは考慮する必要があります。
造粒固化
造粒固化とは、粉体や泥状物に結合剤・添加剤・固化剤などを加えて粒子を結合・固化させて粒子を大きくする処理のことを言います。
無機汚泥を脱水せず、特殊固化剤を用いて専用ミキサーで処理することで砂状にします。
特殊固化剤には高吸水ポリマー(オムツなどにも使われている水を吸収して離さない素材)が含まれているため、短時間で水分が吸収できるのです。
できた砂状のものは、盛土材、セメント原料などに再利用できます。
肥料化
有機汚泥を乾燥・粉砕・発酵させて肥料にすることもできます。
環境負荷が少ない処理方法である上、汚泥肥料には植物の生育に欠かせない主に窒素、リン、カリウムが含まれていることもあり、近年注目されている処理方法です。
ただし、汚泥に含まれていた有害な重金属が製造過程で濃縮され、高濃度になっている可能性があります。そのため、汚泥肥料に含まれる有害物質の基準が設定されており、基準を超える濃度の肥料の製造・販売は規制されています。
メリットが大きい処理方法ですが、時間がかかること・一定期間汚泥を貯めておける設備が必要というデメリットもあります。
メタン発酵
メタン発酵とは、有機物汚泥(主に下水汚泥)を微生物に分解させてメタンを含むバイオガスを発生させる方法です。
メタンは可燃性で、都市ガスの原料になったり、発電の燃料になったりします。バイオガスを使った発電はバイオマス発電と呼ばれます。
メタン発酵の過程で微生物が食べ残した発酵残渣と呼ばれるものは、肥料として利用できます。
環境にやさしい処理方法であり、循環型社会の形成にも効果的のため、注目が集まっています。
油水分離
油水分離とは、油分と水分を分離させて処理する処理方法です。
エンジンオイルや重油などの鉱物潤滑油系汚泥に加熱や遠心分離を施すと、油分と水分に分離されます。
分離した油分は、再生重油としてリサイクルされるケースもあります。
汚泥のリサイクルは株式会社平成へ!

無機汚泥のリサイクル処理にお悩みなら、株式会社平成をぜひご検討ください!
関連会社、和建機械産業株式会社を初め株式会社平成では、静岡県浜松市をはじめ、全国5か所で産業廃棄物運搬業と中間処理を行う会社です。
不要になった物資や廃材をただ再利用するのではなく、より価値の高い新しい製品へと変貌させる「アップサイクル」を行っています。
具体的には、無機汚泥やばいじん・燃え殻を土地改良材や路床材、盛土材、肥料などにリサイクルしています。
バイオマス発電や製紙工場のお客様も多数いらっしゃいます。
プラントの所在地は以下の通り。
静岡県浜松市
青森県八戸市
福島県郡山市(熱海)
山梨県大月市
福島県いわき市
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リサイクルでできた副産品を販売できるのも株式会社平成の強みの1つです。
これまで培ったパイプを生かして、販売先の紹介も行っています。
リサイクルで作っている製品の1つが、「アップソイル」という地盤改良材です。
木質焼却灰を再資源化しています。
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アップソイルの特徴は以下の通り。
・動植物にやさしい中性から弱アルカリ性
・第2種改良土以上の強度を有する
・「土壌の汚染に係る環境基準」にすべて適合
環境問題に対する会社の対応は、これからの日本社会でますます重要視されていきます。
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